機動戦士ガンダム・前史(後編)

 このページでは後編として、「一年戦争開戦〜機動戦士ガンダム第1話」までを解説したいと思います。



 一年戦争開戦 【一週間戦争】

事柄
0079 01 03 一年戦争勃発(3日から10日までの間を一週間戦争と呼ぶ)。公国、連邦政府に対し、独立を宣言。宣戦布告と同時にサイド1、2、4へ奇襲を敢行。
04 公国軍、ブリティッシュ作戦を実施。コロニーを地球へ落下させる。
10 コロニー、オーストラリア大陸のシドニーへ落着。地球上に大規模な気象変動を惹起。

 ジオン軍は、連邦軍への宣戦布告の3秒後に攻撃を開始します。サイド1、2、4へ行われたこの奇襲攻撃の際には、NBC(核・生物・化学)兵器が使用され、わずか数時間で各サイドは壊滅的な打撃を受け、数十億人が死亡してしまいます。この奇襲攻撃には、連邦軍の拠点撃破と、自軍の戦力誇示という、2つの目的がありました。
 ジオン公国が、自分たちと同じスペースノイドを虐殺した背景には、ギレン・ザビの「優先人類生存説」があります。これについては前回説明していますが、志のあるスペースノイドは全てジオン公国国民となっており、それ以外のスペースノイドはアースノイドと同じである、というが根拠になっています。ただし、コロニーへの神経ガスの注入の際には、一般兵士たちには致死性のない催涙ガスとの説明を行っています。

 そして、この攻撃の翌日、公国軍はサイド2、8バンチのアイランド・イフッシュに核パルス・エンジンを装着し、地球へ向けて落下させる「コロニー落とし」が行われます。前日の攻撃は、これを行うための準備だったのです。

 本来、戦争に勝つためには敵戦力の完全打倒が必要となります。ですが、これには敵の全国土の攻略は必要ありません。中枢を破壊すれば良いだけなのです。
 当時、地球連邦は軍部主導の体制をとっており、連邦軍の司令部は南米ジャブローにあります。つまり、ジャブローを落とすことこそ、ジオン公国にとっての勝利となるわけです。
 となると、いかにしてジャブローを落とすか、になるわけですが、ジャブローは天然の大空洞を利用した大要塞で、核攻撃程度ではびくともしません。さらに、ジオン公国はモビルスーツを有しているとはいえ、連邦軍に比べて圧倒的に戦力で劣っています。つまり、ジャブローへ侵攻すること自体、困難なわけです。そこで、一気にジャブローを落とす方法として、スペースコロニーの大質量を爆弾として使用する「コロニー落とし」が選ばれたわけなのです。

 この「コロニー落とし」を行う作戦は、「ブリティッシュ作戦」と名付けられました。これは、植民地(コロニーには“植民地”という意味があります)を失い、その力を弱めた、旧世紀の大英帝国になぞらえたものです。
 南米ジャブローへ向け降下を開始したコロニーですが、連邦軍のティアンム艦隊らの必死の抵抗、および地上からの核ミサイル攻撃などで劣化してしまい、大気圏突入直後、アラビア半島の上空で四散し、崩壊してしまいます。これによって、ジャブローはコロニーの直撃をまぬがれたわけですが、崩壊したコロニーの前部がオーストラリアのシドニーへ落下し、残る各部も北アメリカ、太平洋へと落下しました。
 この結果、シドニーは水没し、オーストラリア大陸は大きく形を変えてしまいます。また、コロニー落下の衝撃波によって津波が発生し、太平洋沿岸の各都市は壊滅、さらに舞い上がった土砂は成層圏にまで達し、全地球規模での気象異変が起こることとなったのです。
 この一連の戦いで、連邦軍は多大な損害を被ったわけですが、公国軍もまた、落下するコロニーの護衛にあたった艦隊の被害が大きく、熟練パイロットの多くを失うことになりました。



 ルウム戦役

事柄
0079 01 11 サイド6、中立宣言。
15〜16 ルウム戦役。連邦宇宙艦隊、敗北。
31 連邦政府と公国政府、戦時条約として南極条約を締結。

 開戦当初の公国軍の奇襲攻撃の際、サイド3、5、6、7は攻撃をまぬがれています。サイド3はジオン本国なので当然なわけですし、サイド7は辺境のコロニーなうえ、サイドと言ってもコロニーが1基だけしかない開発途中の状態です。ですから、公国軍がここを攻撃することに戦略的な価値を見出さなかったわけです。また、サイド5には連邦きっての名将と謳われるレビル中将(当時)率いる艦隊が駐留していたため、攻撃を避けました。となると、サイド6だけは攻撃を行わない理由がないことになります。
 実は、サイド6のランク政権は開戦以前にジオン公国と密約をかわしており、中立を約束していたのです。これは、ランク政権が親公国派だったからこそ、認められたことです。
 こうして、一週間戦争の終了の翌日、サイド6は中立宣言を行います。

 1月13日。公国軍は、失敗したブリティッシュ作戦を再度行うべく、艦隊を再編し、サイド5へと向かいます。これに対し、連邦軍は公国軍の3倍以上の戦力をサイド5へと急行させます。
 1月15日。公国軍がコロニーに核パルス・エンジン装着作業を行っているところへ、連邦艦隊が攻撃をしかけます。この攻撃に対し、公国軍は当初、作業を続けますが、連邦軍の圧倒的な戦力の前に、作業の継続を断念します。これによって、本格的な艦隊戦闘に突入するわけです。
 後に、サイド5の愛称であるルウムにちなんで「ルウム戦役」と呼ばれるこの戦いで、公国軍のモビルスーツは、その性能を遺憾なく発揮することになります。ミノフスキー粒子散布下では、連邦軍の艦船に搭載されていたレーダー類は、全く効果を発揮しなかったのです。
 結局、連邦軍は戦力の80%を失い、さらに公国軍の「黒い三連星」と呼ばれる小隊によって、艦隊司令官のレビル中将(当時)が捕虜として連れ去られてしまいます。一方、公国軍は「コロニー落とし」には失敗したものの、被害は少なく、事実上の圧勝でした。なお、この戦いでサイド5は壊滅し、ここでも億単位の人々の命が奪われています。

 1月28日。ジオン公国は、サイド6を通じて連邦政府に休戦条約の締結を申し入れます。これは休戦条約とは名ばかりで事実上の降伏勧告でしたが、コロニー落としでの痛手、ルウム戦役での敗戦、さらにはレビル中将の件と、連邦軍の士気は相当低いものとなっており、連邦政府はこの申し入れを受け入れます。
 ところが、1月31日。永久中立地帯と定められていた南極での条約締結の席上にて、レビル中将生還の報が飛び込んできます。レビル中将は、全地球圏へ向け演説を行います。捕虜となっている間に公国の実情を見たレビル中将は、連邦軍同様、公国軍も疲弊しているのだ、と語ったのです。この演説は、後にその一節から「ジオンに兵なし」と呼ばれました。
 レビル中将生還と彼の演説の影響で、条約締結は流れ、戦時条約のみが結ばれることになりました。これが、コロニー落としの禁止、NBC兵器の使用禁止、エネルギー採掘のための木星船団への不可侵、捕虜の扱いに関する項目などで構成される「南極条約」です。
 こうして、圧倒的な戦力不足ゆえに短期間で戦争を終わらせるという、公国の目論見は破られることになったのです。



 地球降下作戦

事柄
0079 02 01 公国軍、地球方面軍設立を公表。
07 公国軍、地球侵攻作戦開始。
03 01 公国軍、第1次降下作戦展開。
04 公国軍、資源採掘部隊降下。
11 公国軍、第2次降下作戦展開。
13 公国軍、連邦軍のキャリフォルニア・ベースを制圧。
18 公国軍、第3次降下作戦展開。
04 04 公国軍、補充部隊降下。占領地域の施設を使って戦力の増強を開始。
05
公国軍、宇宙要塞ソロモン、完成。
06
公国軍、宇宙要塞ア・バオア・クー、ソロモン、グラナダを結んだ本土防衛ラインを完成。
公国軍、サイド6にフラナガン機関を設立。

 短期間での戦争終結という目的が達せられなくなった公国軍は、地球侵攻作戦を開始します。ただ、これは地球制圧が目的ではなく、地球のみで産出される希少金属(レアメタル)、化石燃料といった戦略物資を確保するのが目的でした。
 公国軍は、次々と部隊を降下させ、連邦軍の拠点を制圧していきます。先のルウム戦役時と同様、連邦軍にはミノフスキー粒子散布下で有効な兵器がなかったため、公国軍は大した被害を受けずに、侵攻していったのです。
 ただ、海のないコロニーを国家とする公国軍は、海洋での戦いでは不利でした。しかし、3月13日にキャリフォルニア・ベースをほぼ無傷で制圧し、そこに残されていた潜水艦艇を利用し、キシリア・ザビ少将主導のもと、潜水艦隊を設立します。これは、海軍戦力の大半をコロニー落としの被害で失った連邦軍にとって、大きな脅威となりました。

 こうして、公国軍は地球上での支配域を拡大していくわけですが、敵戦闘力の完全打倒を行えるほどの戦力を持ってはいませんでした。また、コロニーという人工環境で育った公国軍兵士にとって、地球の自然な環境は、最大の敵となります。慣れぬ環境での疲れ、風土病、そして士気の低下……。一方の連邦も、戦力の多くを失ったわけですから、戦線は膠着状態に陥り、各地で散発的な戦闘が繰り返されるのみとなりました。
 これが、4月〜6月頃にかけての状況です。



 V作戦

事柄
0079 04 01 連邦軍、「V作戦」および「ビンソン計画」を発動。

「V作戦」の一環としてSCV-27計画で建造されたホワイトベースをMS搭載母艦へ改修。
07
連邦軍、エネルギーCAP技術確立によるビーム兵器の小型化に成功。
連邦軍、ホワイトベース、進宙。
連邦軍、ガンダム1号機、ロールアウト。
連邦軍、RX-78の完成を以て、RX-79計画実行。先行量産型生産開始。
08
連邦軍、サイド7において、RXシリーズの最終テスト開始。

 連邦軍は、戦局打開のため、「V作戦」と「ビンソン計画」を発動します。
 ビンソン計画とは、宇宙艦隊の再建計画であり、本部ジャブローの宇宙船工廠を中心に、マゼラン級戦艦、サラミス級宇宙巡洋艦を多数建造するものでした。
 V作戦は、公国軍のモビルスーツに対抗し得る新型モビルスーツの開発と量産、およびモビルスーツ運用を全体とした母艦の開発です。当初、連邦軍首脳部はモビルスーツには興味を示しませんでした。しかし、ルウム戦役で公国軍のザクの威力を目の当たりにしたレビル大将(生還後、昇進)は、モビルスーツの量産を強く主張し、V作戦は行われることになったのです。

 V作戦では、先に行われたRX計画(前編参照のこと)を基礎とし、3タイプのモビルスーツを開発します。長距離支援用のRX-75「ガンタンク」、中距離支援用のRX-77「ガンキャノン」、そして白兵戦用のRX-78「ガンダム」です。
 ただ、これら3タイプの機体は同時期に開発されたわけではありません。まず最初に開発されたのはガンタンクで、これはモビルスーツとは名ばかりの、戦車のような機体でした。そして、それを受けて2足歩行型のガンキャノンが完成し、さらにビーム兵器の小型化に成功したこともあり、全ての技術を結集して作られたのが、ガンダムなのです。むろん、先に開発が終了したガンタンク、ガンキャノンにも、ガンダム開発過程での技術は追加されています(ガンキャノンにビームライフルが装備される、ガンタンクにコア・ブロック・システムが導入される、など)。ですが、後付けのため、ガンダムほどの性能を持つまでには至りませんでした。
 こうして完成した3タイプの機体は、その型式番号から「RXシリーズ」と呼ばれ、ジオン本国であるサイド3から最も遠いサイドである、サイド7へと運ばれ、最終テストが行われることになりました。
 また、モビルスーツ運用母艦としてペガサス級強襲揚陸艦が開発され、その1番艦であるホワイトベースは、最新の技術を導入して生産されることになりました。



 ガンダム大地に立つ

事柄
0079 08 11〜14 ミッドウェイ海戦。連邦海軍残存艦隊、ハワイ本島の軍港を奪取すべく展開。公国軍の水陸両用MSに撃滅される。
09
公国軍、大西洋で連邦海軍残存艦隊掃討作戦。
公国軍、第1次ジャブロー侵攻作戦を強行し、失敗。
18 公国軍の特務部隊がサイド7・1バンチを強襲(史上初とされるMS同士の実戦)。

 8月〜9月にかけて、両軍の間で大規模な軍事行動はありませんでした。連邦軍はV作戦、ビンソン計画の実施。公国軍は、地球上の拠点でのモビルスーツ生産や、重力下での活動に適したモビルスーツの開発など、両軍にとっては戦力回復の時期だったのです。
 その中にあって、8月に行われたミッドウェイ海戦が、唯一と言ってもいいくらいの軍事衝突でした。ハワイ本島を取り戻すべく攻撃を行った連邦海軍残存艦隊を、公国軍の潜水艦隊が迎え撃つというもので、この戦いで初めて、公国軍は水陸両用モビルスーツを投入し、多大な戦果を挙げました。これにより、制海権は、公国軍にあると言っても過言ではなかったのです。

 そして9月18日。軍事史上、特筆すべき出来事が起こります。
 サイド7にて最終テスト中のRXシリーズの機体を受け取るべく、ジャブローを出発した強襲揚陸艦ホワイトベースが、偶然にも、ゲリラ掃討作戦から帰還途上にあった公国軍特務部隊に発見されてしまいました。特務部隊の指揮官シャア・アズナブル少佐(当時)は、この新造戦艦が噂されているV作戦のものだと直感し、追跡を行いました。ホワイトベースはこの追跡を振り切ることができず、追跡されたまま、目的地であるサイド7へ入港します。
 シャア少佐は、サイド7内の偵察のため、3機のMS-06FザクIIを送り込みます。


【ミニコラム】
 一般に「ザク」と言うと、MS-06ザクIIのことを言います。
 ザクIIにはいくつかの型があり、一般的なのがF型(MS-06F)です。
 南極条約以前に使用されていたのはC型(MS-06C)で、これは耐核用の装甲を持っていました。ところが南極条約で核の使用が禁じられたため、耐核装備は意味をなさなくなり、そこで耐核装甲をなくし、軽量化をはかったF型が登場したわけです。
 なお、「機動戦士ガンダム」でのザクIIは、ほとんどがF型で、地上で出てきたザクIIは、陸戦用に改装されたJ型(MS-06J)となります。


 サイド7内に入った3機のザクIIのうち、1機のパイロットが暴走し、テスト中であったRXシリーズに対し攻撃を開始してしまいます。その際、避難中であったサイド7に住む少年アムロ・レイが、偶然にもRX-78-2ガンダムに乗り込み、このザクIIと戦闘を行った末、撃破します。これが、史上初のモビルスーツ同士による戦闘なのです。

 ……と、このエピソードが、「機動戦士ガンダム」の第1話「ガンダム大地に立つ」となります。以降のエピソードについては、「機動戦士ガンダム」をご覧ください。また、「機動戦士ガンダム」は、ホワイトベースを中心に物語が進んでいきますので、ホワイトベース以外の場所での戦闘などについては、「機動戦士ガンダム0080」、「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」をご覧になると、一部ではありますが分かると思います。




 以上で、「機動戦士ガンダム・前史」は終了です。


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Last Update 2005.06.02