「ゼテギネア神話」は紀元前4000〜3000年頃にバルカン半島東岸、エーゲ海、黒海、カスピ海に囲まれた周辺地域で広く信仰されていた。紀元前3000年頃に小アジアを中心とする地域をヒッタイト人によって統一されるまでは、このゼテギネア神話に登場する神々が崇拝の対象となっていた。それは19世紀の後半に大規模な発掘調査が実施され、その際に出土した粘土書板から詳細な内容が明らかにされた。この粘土書板は古バビロニア期(紀元前1900〜1700年頃)のもので、表面に記された楔形文字はシュメール語で書かれていた。その粘土書板には世界の創世から人類の誕生、そして神々の戦争といった神話やゼテギネア期の歴史が語られており、「古ゼンダ」として世に知られたのは周知の事実だ。
「古ゼンダ」の発見後、1895年にフランスの調査隊によって古都ダウラ(黒海沿岸の遺跡)より大量の楔形文字粘土書板が発見された。その内容は神話や英雄伝説を元に書かれた一大叙事詩であり、ギリシャ神話を伝えるホメロスの「オデュッセイア」や「イリアス」に匹敵するほどの大発見として世を騒がせた。これが有名な「オウガバトルサーガ」である。これには、「古ゼンダ」にも記述されているオウガバトルから、大陸の統一(紀元前3200年頃)までが全8章で描かれている。ゼテギネア神話には数多くの英雄たちが登場するが、このサーガでは大陸統一を果たしたゼノビア王朝の変遷に焦点をおいて脚色されている点が注目される。
古代地誌研究所
松谷高明著「オウガバトルサーガ研究序説」* より抜粋
*1969年初版が古代地誌研究所から刊行。抜粋は1993年刊行の11版より |